ネアンデルタール人は、約3千年前まで生存していましたが、絶滅しました。しかし、現生人類であるホモサピエンスは、今日まで生存し続けています。その違いは、ホモサピエンスは、人口を増やし続けることができる能力があっからだとされています。
アメリカの文化人類学者の中に、それは、現生人類が「自己家畜化」と呼ばれる性質を獲得したからだと主張する研究者がいます。自己家畜化とは、個々の人間が、人間集団の中で、周囲の人々との調和を守って、協調して生きてゆくことができる能力を言います。犬も、野生の狼から始まって、人間と一緒に生きるための、人間に寄り添って、家畜として生きられる能力を持っています。
犬の場合、人間を信用して、人間に依存して生きられるように、狼が持っていた野生の性質を変化させたために、今日まで生き残ったと言えます。野生の狼は、数が著しく減って、絶滅寸前にまで、追い詰められているのにです。人間も、野生のチンバンジーとは異なって、周囲の人々と争うことを避け、助け合って生きることができます。
野生のチンパンジーに似た「ボノボ」は、アフリカのコンゴに住む野生の類人猿ですが、チンパンジーとは違って、余り争いません。これは、ボノボが生活している地域には、ゴリラなどの敵になる類人猿がおらず、食べ物も豊富で、争わなくても生きてゆける環境があったからだと言われています。
野生では気性の荒い「ぎんぎつね」でも、比較的「おとなしい」個体を見つけて、おとなしい別の個体と一緒に育て、「おとなしい」個体同士をかけ合わせて、何世代かを育ててゆくと、数十世代の後には、犬のように人間になつく集団を作り上げることができるそうです。
自己家畜化によって、互いに協調的な集団ができると、その集団は比較的簡単に、大規模な集団を作り易くなります。ホモサピエンスとネアンデルタール人の間には、この自己家畜化による協調性の違いが著しく、集団の規模を拡大できるホモサピエンスが、結果的に生き残ったと考えられます。
ブラウザの「戻るボタン」で、元の画面に戻ってください。